国税庁は昨年末、令和6年事務年度の法人税等の調査事績の概要を公表しました。
その報告内容を見ると、税務調査のやり方が大きく変わってきていることが分かります。
前年と比較して税務調査(法人税・消費税)の件数自体は減っています(▲7.4%)。
しかし、その一方で、追徴税額総額は3,407億円(+6.6%)となり、これは過去10年間では最高額となっています。
※調査1件あたりの追徴税額も過去10年間で2番目の高水準
その背景にあるのが、 AI(人工知能)の活用です。現在は、会社が提出した申告内容を、国税庁が保有する膨大な情報を使ってコンピューターで分析し、申告内容に不自然な点がないかを確認しています。国税庁はAIの具体的な判断基準をすべて公表しているわけではありませんが、報告内容や過去の説明などから、主に次のような点がチェックされていると考えられています。
・売上や利益の急激な増減・・急な売上増加要因、売上除外の有無など
・同じ業種の会社と比べて利益率が極端に低い・・架空請求による原価の水増しなど
・経費の割合が不自然に高い・・偽りの出勤簿作成で人件費の水増し計上など
・消費税の還付申告が多い・・偽りの課税仕入と輸出免税取引を架空計上など
・海外との取引が多い・・各国の税制の違いを利用した租税回避など
このような数値は、過去のデータや同業他社の平均と比較して分析されるため、AIが「不自然な可能性がある」と判断すると、税務調査の対象になりやすくなります。
また、今回の報告では、特に次の様な法人を重点課題と位置づけ、厳正な調査を実施していることが示されています。
・海外との取引がある会社
・消費税の還付を受けている会社
・申告をしていない会社(無申告)
逆に、簡易な誤りが想定される法人に対しては、実地調査によらず、書面照会や電話連絡などにより自発的な見直し・提出を要請する簡易的な接触を実施しているとの事なので、調査の必要性の高い法人に対して、限られた人員と時間を投入していることがうかがえます。
以上のように、最近の税務調査は以前までとは違い「ランダムに来る」というよりは、データ分析によって対象が選ばれる傾向が強くなっているため、日頃から帳簿申告内容の整合性を保ち、売上や経費の変動について説明できるようにしておくことが重要です。
税務調査はすべての会社に来るわけではありませんが、「数字の不自然さ」があると対象になりやすくなるため、普段から正確な経理と記録を心がけることが大切です。
(齋藤 勝)



