相続直前に高額な不動産を購入し、それを賃貸に回すことで評価額を大きく下げる手法や、多人数で権利を分ける不動産小口化商品を利用した相続税対策により、相続税評価額と実際の経済価値(時価)との乖離が、近年ますます大きくなっている背景を踏まえ、令和8年税制改正大綱では、上記のような不動産の評価方法の見直しについて改正案が出されています。国税庁はこれまでも、「通達に則って評価してはいても、実態として著しく不合理なケース」については、財産評価基本通達総則6項(※評価額が著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する)を根拠に、個別に時価評価を行う姿勢を示してきたが、これが納税者側から見ると、非常に曖昧であり問題でした。
今回の改正は、こうしたグレーゾーンを個別対応に委ねるのではなく、制度としてあらかじめ線を引こうとする動きといえます。
◆改正の内容
①被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額により評価する。
(注)上記の課税時期における通常の取引価額に相当する金額については、課税上の弊害がない限り、被相続人等が取得等をした貸付用不動産に係る取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100 分の80 に相当する金額によって評価することができることとする。
②不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産については、その取得の時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価する。
(注)上記の課税時期における通常の取引価額に相当する金額については、課税上の弊害がない限り、出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等、事業者等が把握している適正な売買実例価額又は定期報告書等に記載された不動産の価格等を参酌して求めた金額によって評価することができることとする。
上記の改正は令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用する。
貸付用不動産の評価については、敷地部分について200㎡まで50%減額できる小規模宅地の特例というものがあります。こちらについては、今回の改正内容では触れられていませんが、相続開始前3年以内に貸付事業を開始した宅地等は除外されるなどの改正が過去に追加された経緯がありますので、いずれにしましても、今後は早い段階での準備・対策が重要になってくることは間違いありません。
(齋藤 勝)



