会社を経営していると「利益は出ているのにお金が足りない」という声をよく耳にします。実はこれは珍しい話ではありません。
たとえば、決算書上は黒字でも、売掛金の回収が遅れていたり、在庫に資金が滞留していたりすると、手元資金が不足してしまいます。これがいわゆる「資金繰りの不安」です。
◆よくある間違い① 利益=お金が増えると思っている
経営者の方でも、「黒字なら安心」と思ってしまうケースが多いです。しかし利益は会計上の数字であり、現金の増減とは必ずしも一致しません。例えば、売上が立ってもまだ入金されていなければ、実際のお金は動いていません。
◆よくある間違い② 借入金の返済を経費だと思っている
もう一つの勘違いは、借入金の返済。返済額は経費ではなく「資金の支出」です。利益計算には出てこないため、利益が出ていても返済で資金繰りが苦しくなることもあります。
◆ワンポイント対策:資金繰り表をつける
「お金の見える化」の第一歩は、資金繰り表をつけることです。エクセルでも十分。最低でも、今月と来月の入出金予定を整理しておくだけで、資金ショートの予兆に気づきやすくなります。
◆事例
ある建設業の社長さんは「売上は順調なのに、いつも資金繰りが厳しい」と悩んでいました。確認すると、入金サイトが2か月先なのに、材料費や人件費は即時払い。結果として常に資金が先出しになっていたのです。そこで資金繰り表を導入し、入出金のタイムラグによる不足額について銀行借入を計画的に検討実行したところ、資金ショートの不安が解消されました。
ポイントをまとめると以下の通りです。
- 利益とお金は別物と考えた方が良い
- 借入返済は利益に出てこないが、資金繰りには大きく影響する
- 資金繰り表をつけることで「見える化」できる
お金の流れを把握することは、黒字倒産を防ぐ一番のカギです。難しい会計知識がなくても、日々の資金繰り管理を続けることで、安心して経営に集中できるようになります。
(齋藤 勝)