株取引で譲渡損失が生じた場合は確定申告する義務はありませんが、確定申告をすると税金が安くなる場合があります。
利益と損失を相殺できる「損益通算」と、株の損失を3年間繰り越してその間の利益と相殺できる「繰越控除」という特例です。
1)利益と相殺できる「損益通算」
損益通算とは、上場株式等で生じた譲渡損失をその年の上場株式等の利子・配当所得と相殺することができる制度です。
利子・配当所得に税金がかかってしまう場合でも、損益通算すれば利益額から損失額を引いた額が基準となり税金が安くなります。
例えば、2024年の年間の損益が、上場株式の譲渡損失150万円、利子・配当所得10万円であったとすると、
〈譲渡損失150万円〉-〈利子・配当所得10万円〉=〈年間140万円の損失〉
まずは〈利子・配当所得10万円〉の利益があるため、この10万円に税率20.315%を掛けた20,315円が源泉徴収されています。
ですが、〈利子・配当所得10万円〉は相殺されて0になりますので源泉徴収された20,315円が還付されます。・・・これが損益通算による節税です。
なお、特定口座(源泉徴収あり)で取引をしている場合、その口座内で生じた利子・配当所得と譲渡損失は相殺されて自動的に税額が計算されるので、確定申告の必要はありません。
ただし、以下の2)で説明する「繰越控除」の利用を考えている場合は確定申告が必要です。事例の損益通算後の140万円の損失については、「繰越控除」適用の確定申告ができます。異なる証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で生じた利子・配当所得と譲渡損失に関しては相殺されないので、確定申告をして損益通算する必要があります。
例えば、A証券の口座で10万円の利子・配当所得が出てB証券の口座で150万円の譲渡損失が出た場合、AとBの2証券会社で連携をとって同一人物の口座であると判定したり、異なる証券会社の口座間で利子・配当所得と譲渡損失を自動的に相殺してくれるわけではありません。
2)株の損失を3年間繰り越せる「繰越控除」
繰越控除とは、損益通算をしても損失額が残る場合に、その損失を最大3年間繰り越せて、翌年以降の上場株式等の譲渡益や利子・配当所得から控除できる制度です。
注意すべきは、繰越控除は繰り越す年と翌3年間は毎年確定申告をしなければなりません。その間は株式を売却しなかった年も確定申告が必要になるので、忘れず申告しましょう。
税理士 廣島 清量